2017年11月08日

3時間、ひたすら見る。

イザベラガードナー美術館で受けている美術館教育のマスタークラスでの一つの課題が、

3時間かけて、一つの作品を見る。

というもので、もとはハーバードでArt Historyを受け持つJennifer Roberts教授が行なっているものだそう。

教えられるのは簡単だし、スマートフォンなんかでインスタントに情報も得られるけど、
見たときの一瞬の印象だけで終わるのではなく、
自ら『深く観察』し、『気がつく』には時間をかけることも必要。

特に現代社会ではその時間をかけて学ぶという『辛抱強さもスキルの一つ』になっているというコンセプト。

この課題は自分の見る作品について調べたりせずに、『観察のみ』から入ることを勧められた。

ガードナーでのクラスでは少し変えて、美術品は美術館内のものからいくつか選択肢が与えられたのだが、僕はその中で敢えてせっかくならやったことないものに挑戦してみようと思い選んだのが。。。

Chair

イス。

セットで並べられたこのイスの周りを3時間、座ったりウロウロしながら見てみた。

この3時間というのは基本的に休みなしで見るのが前提。
朝1時間みて、お昼食べてまた1時間見て。。ではない。

あえて、苦痛にさえ感じる長い時間をかけて観察することから何が見えてくるのか。
作品についてだけではなく、自分ってどういう考え方をする人なのか、3時間の間どう気持ちが動くのか、など自分自身を見つめるということでもある。

特にこのクラスの美術教育の基礎であるVisual Thinking Strategyというのは、深い観察力を促し、作品との個人的な繋がりや意味合いを見出していくという面が大きく、

アート作品は自分を映し出す『鏡』みたいなものでもあり、
新たな世界を覗く『窓』でもある。

みたいなかんじ。

この課題に取り組んで見た結果からいうと、この3時間は僕にとって対して苦痛にはならなかった。

ただこれは僕だけではなく、クラスのほとんどの人が実はそうだったらしい。

もともと“アートに興味のある人”が集まっているから。。という考えもあるだろうけど、ここのポイントはそういうことだけではなかったと思う。

興味があるから見る。のではなく、

見ることでどういう興味が出てくるか、という興味。

見れば見るほど、発見があり、驚きがあったり、疑問が出てきたり、
仮説を立てて見たり、検証してみたり、想像してみたり。

インスタントに入手できる『情報』よりも、
この『思考の過程』そのものに価値がある。

でも、今から3時間またやってと言われれば、すぐにできるわけじゃないな。。

やろうというある意味での『覚悟』の上で取り組むこともキーにもなるんじゃないかな。

あと、3時間かけて疑問に思ったことも、別の人の意見から考えてもいなかったアイディアがポンとでてきたのもハッとした。

自分の小さな『発見』が『興奮』に繋がって、その興奮が別の『興味』を引き出して、興味から『新たな疑問』などど、どんどん考えが進んでいったのだけど、この『興奮』を起爆剤に動いた副作用としてあったのが、

気がつかないうちに『視野が狭くなっていた』ということ。

人と働くこと、考えることってやっぱ大事だね

しかも僕が選んだこのイスは、選択肢として“Set of chairs”と書かれていて、写真の6つのイスを眺め続けていたのだけど

Chairs

おわった後にガードナー美術館のウェブサイトで調べてみると、何と最初に書かれていたのが。。。

「この7つのイスは・・・・」

7つ・・・?!ビックリ

3時間もこの部屋にいて、もう一つ同じデザインのイスがあることに気がついてなかった。。




Jeniffer Roberts 教授のプレゼン↓



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